詰んでいた状況
吾は多読なほうだ。
したがって、外出する際は必ず書を持ち出し、隙間時間を見つけては読書に励むようにしている。
活字を好むので、媒体は新書、新聞、雑誌問わないが、電子書籍は避けている。
なぜなら、電子書籍には物理的な厚みがない。
筆者が追求した研究の熱量や、伝記などで残りのページ数で主人公の命数を計る緊迫感も伝わってこないからだ。
それはいい。
吾は読書するにあたり悩んでいることがある。
それは、インプットは多いがなかなか記憶に残らないということだ。
当時の敗北と感情
多読することは、単に書を読むことが好きだということもある。
その本懐は、多くのジャンルの書を読むことで知識を多様化し、
情報発信やコミュニケーションに応用することにある。
ところが、もともと気が散りやすい性分もあって、一冊読み終えるのにかなり時間がかかる。
段落を読み進めているうちに他のことを考えだしてしまって、内容がまったく頭に入ってこず、
また最初に戻って読み直すことはしょっちゅう。
せっかく分厚い大作を制覇しても、記憶しているのはほんの一部分であることに気づいて、
途端に自己嫌悪に陥ることもよくある。
書の構成が悪いのではなく、吾の読み方が良くない。
読書の質を上げるための改善が必要だった。
転機となった書
『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』
そんな中、この書を手に取った。
以前から、重要な部分や共感できる一節はメモするようにしてはいたが、
結局のところ、そのこと自体を記憶するのは吾の脳だ。
重要な部分をピンポイントでアウトプットする瞬間に、脳が動かなければ意味がない。
手当たり次第に無策のまま活字を追い、
脳に叩き込むこれまでの読書法はもう終わりにしたかった。
この書から得た気づき
「つまみ読み」「マルチメディアの活用」「読み返し」など、得心のいく技法の提案は多い。
だが、吾がもっとも共感できたのが、インプットするには目的意識が必要ということだ。
- できる感:自分の能力が上がる、新しいスキルや知識が身につく
- 自分から感:自分の意思である、自分以外の何かに突き動かされていない
- つながり:他の人たちと関係性を広げて豊かになる、社会に貢献する、コラボレーションがある
これは意識していたつもりではあった。
だが、吾は書を読みながら目的を探そうとする傾向があり、
読み始める前にアウトプットを想定する意識が乏しかった。
だから、気疲れするほど精読一辺倒になっていた。
組み直した戦略
何をするにもモチベーションは必要だ。
- 人とのつながり(関係性)
- 自分が何かできるという感覚(有能感)
- 自分が決断したことを自分の意思に沿ってやっているという感覚(自律感)
これら「心の三大欲求」が満たされることで、吾らは動機づけられる。
アウトプットすることを前提とし、心躍る状態で書に向き合うのだ。
すると、嬉々としてページをめくれるようになった。
実際に試したこと
モチベーションとは、結局のところ人間の感情だ。
だから、モチベーションを維持しながら読書することとは、
映画やドラマのように緩急つけることだと解釈した。
つまり、その書が吾自身が映像化することを思い描きながら読み進めるのだ。
精読を避け、必要な情報のみ集中し、その他の部分は少しリラックスして流し読む。
初めは抵抗あったが、コツが掴めてくると、
無味乾燥な自己啓発書に、勝手に見どころや泣きどころのシーンを見つけている吾自身に気がついた。
現在の状況と変化
吾の読書ペースは、週1冊だ。決して多くはないだろう。
しかし、読書のモチベーションを意識することで、
300ページほどの書の中でどこが重要な部分なのか掴む勘が養われたし、何より書を選ぶ目が培われた。
今では、選ぶ書すべてが当たりで、読後の満足感が半端ない。
自然と、アウトプットに苦手意識がなくなった。
同じ状況の者へ
読書法に正解はない。だが、ひとつだけ、決定的な差がある。
それは、読む前に「何を持ち帰るか」を決めているかどうかだ。
ひとつでいい。
この本から何を盗むのか、先に決めよう。
その瞬間、ただの文字列だったページが自分のための情報に変わる。
もし記憶に残らないのだとしたら、それは才能の問題じゃない。
「目的を持たずに読んでいるだけ」だ。
